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4-17 危険な誘惑 1

last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-13 21:32:42

 突然、肩に手を置かれた朱莉は驚いて翔を見上げた。翔の瞳はいつになく真剣に朱莉だけを見つめている。

(え? 翔さん?)

以前の朱莉だったなら、きっとここで頬が真っ赤に染まっていたことだろう。しかし、今の朱莉には不思議とそのような感覚が湧きあがってこない。ただ、感じたのは戸惑いだ。

「あ、あの……?」

朱莉の声に、翔はハッとなった。気付けばただ黙って、朱莉の両肩に手を置き、じっと見つめている自分がいた。

「い、いや……明日香のことなんだけど……」

翔は朱莉の肩から手を離すと、視線をそらせた。

「暫くは様子を見ようと思っているんだ」

その言葉に朱莉は耳を疑った。

「え……? 様子を見る……? ほ、本気で言ってるのですか?」

「あ、ああ。お互い少し距離をあければ互いの気持ちに気付くんじゃないかと思ってね」

朱莉と視線を合わせず、歯切れが悪そうに翔は口にした。

(そうだ。明日香ともう少し離れてみればきっと今の自分の気持ちが見えてくるはずだ。それは明日香にしたって同じことが言えるんじゃないのか?)

「翔さん。でもレンちゃんは……? レンちゃんはどうするのですか? あの子は明日香さんと翔さんのお子さんですよ?」

「ああ。蓮のことなら大丈夫だ。何しろ蓮は……」

そこまで言いかけて翔は口を閉ざした。何故なら朱莉が悲し気な目で自分を見つめていたからだ。

「蓮は……明日香の子でもあるし、俺の……鳴海家の跡取りでもある。だが明日香は子供が苦手だし、子育てに向いているとも思えない。今のままでは、双方の為に良くない気がするんだ。それならいっそ………」

(朱莉さんにこのままずっと……)

しかし、その言葉は告げなかった。

「翔さん? お話の続きは?」

朱莉は首を傾げた。

「い、いや。俺がこのまま引き取って蓮の世話は自分で見ようと思っているよ」

(出来れば朱莉さんも隣にいて欲しい。彼女は母性に溢れているし、このままずっと良い母親になってくれるだろう。でも今はそれを告げられない……そんなことをすれば、警戒されてしまう可能性がある。もっと念入りに準備をして、朱莉さんの心を掴んでからでも遅くは無いだろう)

この時には既に翔の頭の中から、琢磨が朱莉に好意を寄せている事実等すっかり消え去っていた。ただ、このまま朱莉と一緒に暮らせれば蓮と3人で穏やかな家庭を築けるだろう……そのことしか念頭に無かったのだ。

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